七夕と万葉集

七夕と万葉集

 日本独自の「七夕」が年間行事として定着する前は、日本の文化は中国の影響を強く受けていました。特に「星伝説」が伝わってからは、日本最古の歌集である「万葉集」に百三十首を越える七夕(たなばた)の歌が残っていますが、そのほとんどが男女の恋の物語として詠まれています。特に飛鳥時代に「歌聖」として有名だった「柿本人麻呂(かきもとのひとまろ)」という歌人は、恋歌(れんか)という恋を題材した歌を多く残しており、その中には七夕を題材にした歌も含まれています。その一つが、万葉集第十巻に残っている下記の歌です。

原文:天漢 梶音聞 孫星 与織女 今夕相霜

読み:天の川、楫(かぢ)の音聞こゆ、彦星(ひこほし)と織女(たなばたつめ)と、今夜(こよひ)逢ふらしも

意味:天の川にかじの音が聞こえます。彦星(ひこほし)と織女(たなばたつめ)は、今夜逢うようです。

 これを話し言葉にすると、この様になります。

「今夜は七夕の夜なんですね。楫(かじ)を漕いでいるのは彦星(ひこぼし)です。彦星が天の川を舟で渡って織姫星(おりひめぼし)に逢いにゆくのですね。」

 これは彦星が自分で小舟に乗って織姫に会いに言っている場面を、五・五・七・七のリズムに乗せて、歌っています。これを読むと、彦星が織姫の為に空に横たわる星の川を渡って行く姿が浮かんでくる様ですね。

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